はじめに
「え?アニメイトにめっちゃ可愛い人いるなぁ…ん!?可愛すぎない?」
人生で初めて二度見してしまったあの夏の日。朝一のアニメイトでピリついた列に並ぶ僕は、一瞬だけ緊張を弛緩させてしまった…
これは、ひとりのミルキアンが七転八倒しながらも、栄光を掴み取り、そして大切なことに気づくストーリー。
第一章 突然の前夜
「いや、めっちゃ焼酎飲んじゃってるんすけどぉ↑」
アルコールでへらへらしていた脳みそを、歓喜と失望が揺さぶった。
2018年8月31日、華の金曜日。会社の飲み会はそんなに行きたいものではない。しかし、酒に酔ってしまえば勝手に楽しくなってくる。この日も夜の8時には、すでにビールから焼酎に切り替えて、先輩や上司としょうもない話でゲラゲラ笑っていた。
会話が一息ついたとき、何気なくスマホをいじる。しかしそこに示された情報は、僕のぼやぼやした眼球をギンギンに釘付けにした。
「写メ会…スゴすぎる」
憧れのミルキィホームズ。大きなステージで歌って踊るまぶしすぎる存在、ミルキィホームズ。そのミルキィホームズと一緒に写真が撮れます。と言っている。
興奮しながら詳細を確認する。「予約イベント」の詳細。翌9月1日から、アニメイトやゲーマーズの特定店舗でファイナルシングルCDを予約すると写メ会参加券がもらえるという。
僕は言った。
「9月1日って…明日かよ!いや、めっちゃ焼酎飲んじゃってるんすけどぉ↑」
アルコールでへらへらしていた脳みそを、歓喜と失望が大きく揺さぶった。明日CDを予約しに行けばミルキィと写メが撮れる。しかし、写メだ…参加券は絶対に瞬殺だろう。明日は昼まで寝る気で飲んでいるこの状況。昼に起きて店に行ったとて何も残ってはいまい…。どうすればいいんだ、と頭を抱えかけたその時、
「飲めよー」
と焼酎を先輩から注がれる。ま、とりあえず飲んでから考えっか、とへらへら酒を飲む僕だった。なんとヘタレなミルキアンだろう。けどそんな僕でも受け入れてくれるミルキィホームズがありがたい。
飲み会は10時ごろまで続いただろうか。さすがに2次会は勘弁と思って、そそくさと駅に向かう。その道中、ずっと安西先生が頭の中でささやいていた。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」
「安西先生…!写メが撮りたいです……」
家に帰ると、とりあえずヘパリーゼの錠剤を飲んだ。そして、6時半に目覚ましをセット。僕が狙うのは、みもりんと橘田さんと3ショットで撮れる写メ会。予約店舗はアニメイト秋葉原店。開店2時間前の8時に並べばいけるんじゃないか、そうにらんだ。(確か開店は10時だった気がしてます。記憶違いだったらすみません。とにかく2時間前を狙ったのは覚えています。)
「あなたならできるわ!」とセイラさんを脳内でリフレインさせながら風呂場で頭をわしゃわしゃ洗い、洗面台で歯を磨いて、布団に入るのであった。
第二章 最終コーナーの先
一度、目覚ましが鳴ってた気もする。
ハッとなって時計を見た。7時半…!
くそっ!すでに1時間もロスしている…!しかし、体が重い。まごうことなき二日酔い。肝臓すまん、耐えてくれ。そう思いながら洗面台に這い向かう。
身支度をすませ、家を出る。電車に乗って、秋葉原へ。時計を見るのは怖かった。
秋葉原の改札を出て見えてくるのは、秋葉原ゲーマーズ。そらまる先生と2ショットが撮れる写メ会参加券の予約店舗だ。
「やべぇ…」
めっちゃ列ができていた。二日酔いとはいえ小走りにならざるを得ない。
そして、たどり着いたアニメイト。
「これはやべぇ…」
めっちゃくちゃ列ができていた。時計を見ると、開店1時間前。1時間のロスが悔やまれる。
店員さんが列を数えている中、前に並んでいた人が店員さんに「ここら辺予約いけそうですか?」みたいなことを聞く。「いやぁー、微妙かも…んー、もしかすると難しいかもしれないっすけど…」みたいな答え。1時間のロスが悔やまれる。
開店前には、店員さんから「お一人様、1会計につき3枚までのご予約とさせていただきます」との案内が。写メ会は1会場3回行われる。つまり、大抵の人は3枚予約する。参加券はこの行列の3倍のスピードで枯れていく。1時間のロスが…悔やまれる。
でも、気持ちで負けちゃだめだと思った。信じていれば、ワンチャンある。
開店すると店員さんに従って行儀よく列が店内に吸い込まれていく。僕も店内に入る。階段を上り、CDフロアに到達。CD棚の島をグネグネと遠回りで歩いていく。1歩1歩レジに近づいていく。でも、まだ2曲がりくらいしないとレジには到達しない。焦るな。いつも以上に手汗がすごい。握りしめるひよこちゃんハンドタオルが汗を吸いすぎて冷たい。その時…!
「〇〇時の回は終了しましたー」
レジから恐怖の宣告が一つ発せられた。脇汗も噴き出す。エアコンが冷酷な風を浴びせ、脇の動脈から体全身に凍えが広がる。でもまだ残り2回の枠はある。気持ちを切らすな。この最終コーナーを抜けて真っ直ぐ進めばレジだ。その時…!
「〇〇時の回は終了しましたー」
また一つ恐怖の宣告。やめてくれ。いや、負けるな、気持ちで負けるな。ほら、最終コーナーを抜けた。レジが見えてきたぞ。肝臓も頑張ってくれている、俺もがんばれ…!
と、その時…
ふわっと明るい光、いや、キラキラした雰囲気が左目の端に映った。
ふと顔を左に向けると、そこだけアニメイトじゃないかのような光景が。(アニメイトに失礼)
「え…めっちゃ可愛い人だ」
面食らってしまった。ちょっとふわっとした気持ちになりながら顔を正面に戻す。そして思った。
「ん!?可愛すぎない?!」
パネルの横で写真をとって、デジカメの画面を数人の大人と確認しながらうんうん頷いているめっちゃ綺麗な人。思わず僕は二度見してしまっていた。そして、頭の中の記憶をたどりだし
「あ!えなこさんだ!うわ、実物めっちゃ可愛すぎる…!」
そう思った。そう思ってしまった…僕は緩んでいた。その時間、おそらく数秒。緊張を弛緩させてしまった。ミルキィと写メを撮りたいという強固な気持ちを、切らしてしまったのだ…!
その数分後、時は残酷に訪れる。
「予約イベント参加券すべて終了しましたー」
数メートル先にレジはあった。だが、前には20人弱の列が残っていた。
1時間のロス…いや、違うだろう。気持ちが足りてなかった。ミルキィと写メを撮るんだという気持ちが全然足りてなかった。ミルキィへの愛が、僕には足りていなかった。
第三章 無様な敗走
やってしまった。ミルキィと写メを撮るという貴重な機会を、逃してはならない機会を、逃してしまった。
錯乱する僕。…いや、ワンチャンある。何が何でも掴み取るんだ!
気づいたら秋葉原ゲーマーズに向かっていた。そらまる先生と写メを撮るんだ!
奇跡的にまだ列が続いていた。おもむろに並ぶ。
しかし、CDフロアに到達するまでもなく配布終了のおしらせ。
「あsdfghjkl;:」」
無意識に総武線に乗り込み、新宿に向かう。
だが、時すでに遅すぎ。アニメイト新宿には、もう何もない。
「(嗚咽)」(※心の中で)
池袋にも行った。微塵もなかった。

帰りの電車。二日酔いがぶり返し、お腹が痛くなった。う○こ漏らしそうになった。
家に帰って、失意の中トイレにこもる。もはや徳川家康のしかみ像。…でも、トイレでお尻を拭きながら思った。写メ会は「予約イベント」だけではない…「リリースイベント」もある。
歯ぎしりしながら僕は言った。
「リリースイベント…行ってやる! 写メ会…1会場残らず!」
第四章 進撃の積み
「リリースイベント」、そのイベント内容は「予約イベント」と変わらず写メ会。
これらのイベントの違いは2つある。1つは一緒に撮れるメンバー。予約イベントだと
- 仙台会場:みもりん&橘田さん
- 宇都宮会場:橘田さん
- 盛岡会場:みころん
- 津田沼会場:そらまる先生
だったのに対し、リリースイベントは
- 大阪会場:4人全員
- 東京会場:4人全員
- 東京会場:みもりん
- 名古屋会場:そらまる先生&みころん
ということ。
そして、もう1つの違いが、予約イベントはファイナルシングルCDに付いてくる抽選券で申し込み、当選すれば行けるものであること。
抽選。
それは可能性を公平に与えられる崇高な配布方法である。…そして、積めば積むだけ当選確率が増すという限界バトルを挑めるということでもある。(諸手を挙げて良いこととは言いがたいが…)
決意にみなぎった、焚きつけられたミルキィ愛に燃え上がる僕にとって、選択肢は1つしかなかった。推しは推せるときに推せ。…CDは買えるだけ買え!
以前に木谷さんが、ファイナルシングルCDは積ませない方法でオリコンチャートに載せるうんぬん言っていたことは120%忘れていた。
申し込める会場ごとにECサイトを変えて、買った。買って、買って、買った。
その枚数、計31枚。
普段から積むことに慣れてる人にとっては、もしかしたら少ない数なのかもしれない。でも、生まれて初めて同じCDを多量に買った僕にとっては、「やったったぜ」といった興奮があった。

買ったら、次は申し込み。1枚1枚Webフォームに打ち込んで申し込む。31回申し込む。苦ではなかった。いや、苦しいとか楽しいとかではなかった。ひたすらに念じるのだ。当たれ、当たれ、当たれ…そう念じながらただただ一心不乱に打ち込んだ。
ちなみに、もう結構時も過ぎたし、自分がどういう配分で申し込んだかを恥ずかしながら書いちゃうと、
- 大阪会場:4人全員 → 10枚
- 東京会場:4人全員 → 10枚
- 東京会場:みもりん → 6枚
- 名古屋会場:そらまる先生&みころん → 5枚
全会場とも写メ会は複数回行われるため、分散して申し込むこともできたが、絶対写メを撮るという決意のもと、全会場とも1回の枠に上記の数をぶち込んだ。
これで良かったのか、やりすぎだったのか…その答えは未だ分かっていない。
ただ、当落結果だけは分かっている。
そう。僕は申し込んだすべての回に当選した。すべての会場で写メを撮ることができたのである。
第五章 掴み取った栄光
2018年10月24日水曜日。当選メールを確認し、僕は左手をグッと握りしめた。
「やったったぜ」
前日までは発狂して喜ぶだろうと思っていたが、いざ当選メールを見てみると、意外にも清らかな気持ちだった。いい写真撮ろう…!そんな意気込んだ気持ちになっていた。
そして、写メ会のために作っておいたTシャツを見つめる…
時はさかのぼって数週間前。もし当選したら…いや、必ず当選するに違いないわけだが、当日はどうやって写真に写ろうかと僕は考えていた。
写真の中で絶対に表現したかったのはミルキィへの感謝。なぜ、感謝するのか。それは、僕の人生を意味あるものにしてくれたから。心の底から楽しいことを教えてくれたから。普段、疲れた顔して働くサラリーマンでも、ミルキィに会うと元気に笑えた。…この感謝を伝えたい。
この想いを具現化したのが、「満面の笑み」Tシャツ。デザインもくそもなく、なんとも素人感満載だが、でも言いたいことは言えてる(と思っている)。ミルキィと一緒にいられて満面の笑みになってます!ということが表現でき、下には「ミルキホームズ、満ち足りた時間をありがとう。」とストレートに感謝を示せる。

このTシャツを着て、ただ心の底からの満面の笑みでミルキィと一緒に写真を撮れれば、もうなにも悔いはない…!
そして迎えた2018年10月27日土曜日。大阪会場。
初の写メ会で緊張が尋常じゃなかった。大阪会場では、写メを撮ってる様子含めてみんなで楽しんでもらおうという配慮か、撮影の様子がオープンにされていた。オープンにしてもらうことでずっとミルキィの4人を見ていられるが、自分が撮る番になると、恥ずかしい。個人的にはあのTシャツがなお恥ずかしい…。いや、ミルキィへの感謝だから恥ずかしいとか言っちゃいけないのだが、でも、恥ずかしい。
自分の番が回ってくる。目の前にミルキィの4人。心臓は飛び出た。とりあえず「こんにちは」と震える声であいさつすると、4人は「こんにちはー」と素敵な声で返してくれた。天国ってこうなってるのか…そう思いながら椅子に座る。そして目一杯の満面の笑みでパシャリ。
「ついにやったったぜ」そう思いながら「ありがとうございました」と言うと「ありがとうー」と4人が手を振ってくれる。へらへらしながらお辞儀するほかなかった。
撮影が終わると最後に写真のチェックが行われた。スタッフさん(マネージャーさんだったかも)と自分で画像を見て、お互いに問題ない写真になっているか(半目になってないかなど)を確認する。
その時スタッフさんがフフっと笑ったのを覚えている。
会場を出てから改めてじっくり写真を見てみると、「満面の笑み」の矢印の先にある自分の顔はアヘっていた。なるほど、僕は本当に天国に行っていたのであった。
翌2018年10月28日日曜日。東京会場。
大阪での写メ会の余韻に浸って、昨晩大阪から家に帰った後にストロング酎ハイを飲みすぎた僕は二日酔いだった。何も学ばない自分に嫌気がさしたが、シャワーを浴び、2回歯磨きをして会場に出向いた。
東京会場からは、撮影場所はパーテーションで隠すスタイルになっていた。大阪会場での様子を見て岡田さんらが色々考慮してくれたのだろう。試行錯誤して常に改善を実行する姿勢、サラリーマンとして尊敬の極みである。
みんなには見えない状況となったこともあり、やや緊張は抑え気味で臨めた撮影。前回よりもにこやかに「よろしくお願いします」とあいさつすると、橘田さんが「そのTシャツ自分で作ってくれたの?」と満面の笑みTシャツに気づいてくれた。ほかの3人も「ほんとだー」と気づいてくれて、それだけで僕は昇天した。
写真のチェックをすると、大阪での写メよりいい笑顔をしている自分がいた。二日酔いもすっかり抜けて、肝臓もいい笑顔だったに違いない。
2018年11月25日日曜日。東京みもりん回。
ミルキィの4人と2度も写メを撮らせてもらって、随分慣れてきた。というはずもなく。この日も緊張感をもって臨んだ。2ショットというのもなんかドキドキする。
自分の番が来る。目の前にみもりんが凛としてたたずんでいる。…すごい。と思った矢先、「あ、満面の笑みだ」と笑顔で出迎えてくれるみもりん。「あ、あ、はい!ありがとうございます!」と不意打ちの歓喜に心臓をときめかせながらパシャリ。
写真の中の僕は、「ありがとう…!みもりん」という顔をしていた。
2018年12月2日日曜日。名古屋会場。
いよいよ写メ会もこれが最後。
自分史上初の名古屋上陸。見知らぬ土地というドキドキ感もあり、吊り橋効果的なものがあったかもしれない。
写メ会では早めに順番が回ってきて、ちょっとテンパる自分。「ゆっくりで大丈夫ですよー」と言ってくれる岡田さんのホスピタリティにときめいたのを覚えている。ただ、テンパってて肝心のそらまる先生とみころんとの会話を覚えていない…!
しかし、写メを確認してみると、これまでで一番きれいな笑顔の自分と、満面の笑みを指さしてくれているそらまる先生とみころんがいた。
その後、せっかくの名古屋だったので名古屋城の観光にも行ってきた。そこで出会ったのは「名古屋おもてなし武将隊」。お客さんとの交流会っぽいことが行われていてふらっと参加してみた。そこでは、単に興味本位で来ただけの僕に対して、ファンの方が交流会のことを親切に教えてくれて、そのホスピタリティにときめいたのを覚えている。そして清正さまと太助さんと写真を撮らせてもらえて、握手もしてもらえて、さらにそのホスピタリティにときめいたのを覚えている。
帰りの新幹線。スマホを片手にこれまでを振り返った。えなこさんに焚きつけられたミルキィ愛。そして手にした4枚の写真、一生の思い出。
スマホで写真をひとしきり眺めたあと、何気なくえなこさんをググる。えなこさんの出身地は名古屋だった。
そうか、すべては名古屋のホスピタリティだったのか。と、謎に感慨にふける僕がいた。
第六章 その後
七転八倒しながらも、無事に参加することができた写メ会だが、そのイベントはミルキィホームズ Road to Finalの一環である。
ゆえに、写メ会が終わったら、来てしまう。ファイナルライブ。
ライブ中は目一杯バカになって楽しんだ。ありがとうという気持ちがどこからともなくあふれ出す最高のライブだった。
その後、僕は平成最後の日、平成の思い出としてこれらの写真をツイッターに残した。
そしてそのツイートで、限定31個の貴重な湯呑を手にすることになった。
ちなみに、湯呑がもらえたのはツイートの中身が良かったからではない。単純な抽選である。世界は抽選でできている。
だから、人生で大事なのは、運と、気の持ちようだ。僕はこれからも抽選に申し込み、世の中のホスピタリティに感謝する。
ミルキィホームズ、えなこさんありがとう。岡田さん、木谷さん、マネージャーさん、関係者みなさんありがとう。アニメイトもゲーマーズもポニーキャニオンもありがとう。あと、名古屋おもてなし武将隊とファンの方もありがとう。名古屋ありがとう。大阪も東京もありがとう。横浜もありがとう。世界ありがとう。あと、Twitter Japanと肝臓もありがとう…!
おわりに
今回はミルキィ写メ会の思い出を書き留めてみました。
えなこさんのインスタグラムにいいねを押していた時、ふとこの事を思い出して書き始めたのですが、当時の気持ちを振り返りながらつらつら書いてたらこんな謎に小説っぽい文章になってしまいました。第六章を書いてるときには、中島みゆきさんの「ヘッドライト・テールライト」が頭の中で流れてました。
記憶が曖昧だったり、自分の心理描写は若干盛り盛りなところがあるんですが、概ね事実です。あと、色んなホスピタリティに触れ、感謝の気持ちをたくさん感じたのも事実です。
どうぞみなさんも、色んなホスピタリティに感謝して人生をいいものにしてください。ちなみに、ホスピタリティを感じるためのオススメの方法は、表舞台で活躍している人を応援する、つまりだれかのファンになってみることです。

